
過去のやりなおし数学講座はどうでしたか?

数学の問題を解くわけじゃないから、
読みやすかった!

今回の「仕事に役立つ数学の力」って何だろう?は、
論文的思考について紹介します。

論文かぁ…ほんとに数学なの?
国語みたいww
社会人に求められる数学の力として、第1回は数字の力、そして第2回は図形の力を挙げました。今回の第3回は「論文的思考」について考えてみたいと思います。
数学では論文というより「証明の手順」といった方が結びつくかもしれません。また「数学の力がある=(イコール)理系である」と見られがちですので、今回は社会人に求められる理系の力としてイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。
・数学が苦手でコンプレックスだった。
・文系だったので数学的な感覚があるか確認したい。
・社会人として身につけておきたい数学の力について知りたい。
勉強することや教えることが大好き40代初心者ブロガーです。国立大学理学部数学科卒業後、教育職を13年経験。一つひとつの悩みを解決できるような記事になるよう努めます。是非、最後までお読みいただければうれしいです。

過去の第1回数学講座、第2回数学講座をまだ読まれていない方は、是非こちらもお読みください。
仕事で役立つ数学力とは?社会人なら文系でも必須「数字的感覚」【大人のやり直し数学講座①基礎編】
差がつくプレゼン作成のコツは数学力!仕事で役立つ「図形的感覚(図とグラフ)」【大人のやり直し数学講座②基礎編】
目 次
1. コミュニケーション力に論文的思考がなぜ必要か?

職場で何を言いたいのか分からない人、説明が分かりにくい人などいませんか?誰かに何かを説明するときは根底に伝えたいことがあるはずです。このようなときに数学の証明や論文作成の思考を真似ることが活かされてきます。それでは職場で意思疎通がうまくいかないシーンを思い浮かべてみましょう。
数学の証明での論文的思考

結論を言わずに説明が長い…

証明は結論ありきですので、
途中の定理だけでは意味がありません。
「結局この人は何を言いたいの?」と考えながら説明を聞いてしまうときってありますよね。長~い話が終わったとき、ようやく「あ~これが言いたかったのね」と思ってしまいます。
このような「うまく意思疎通ができない会話」と「証明」を見比べてみましょう。
証明とは、ある命題が正しい(真である)ということを、すでに正しいことが証明された命題を使って論理的に導いていくことです。最初に明らかにすべき命題(証明したい結論)があるのが証明です。これは会話でいうところの相手の主張(話したいこと)です。
証明は結論に向かって論理を展開していくのと同じように、会話も最終的に伝えたい結論に向かって話しているはずです。しかし、この結論を伝えずにダラダラと話す人がいます。すると、話を聞く側は会話が終わるまで結論を考えながら聞かなければなりません。そのため結論を伝えずにダラダラ話す人の話は理解されにくいのです。
説明が苦手な方は証明と同じように話の初めに「結論から申し上げますと…」と先に述べてみましょう。そして、その後説明を補足する形で行うと説明を聞く側は楽になります。しかし、お笑いのネタではオチから話すのはやめましょうねww

途中で違う話に脱線する人もいるよね?

証明では蛇足は減点になることも!
証明では結論を導くために不要な定理は書きません。テストの採点では、蛇足と判断され減点対象となることもあります。会話でも伝えたいことと関係がない話を挟まれると、結局何を言いたいのかが伝わりにくくなってしまうのです。

例え話の順序がバラバラな人…

定理を順序立てて使えていない
説明している途中で前の論点に戻ったり今の論点に戻ったり、行ったり来たりしてしまうことはありませんか。事前に話の構成を考えずに説明を行うと、頭に思い浮かんだ順に言葉を発してしまいスムーズな説明ができません。証明のようにまず結論ありき(A=Cと言いたい)で、順序立てて論理を展開(A=BかつB=C、よってA=C)していくことで、スムーズに話を結論へつなげることができます。

そもそも理解していないものを説明している人…

理由を書かずに成り立つ式のみ書いている
自分自身が説明したいものを理解していないケースもよくありますね。そのため相手に理解してもらうための理由がありません。不十分な説明に対して質問されてしまうと答えられなくなってしまいます。
証明でも同じです。これが成り立つのは予想できるけどその理由が分からないと、成り立つ式のみを書いてしまうケースです。証明はそもそも成り立つ理由を順番に説明していくものですので、この理由がなければ証明にはなりません。
証明の例を4つ挙げました。これらをまとめてみます。
- 最初に結論を述べておく。
- 途中で結論に関係のない話をいれない。
- 結論に導くための説明や理由を順序立てて話す。
- 結論に導くための説明や理由を省略しない。
小論文・理系論文での論文的思考

次に小論文を書くときのポイントを考えてみます。例えば、以下のような設問があったとしましょう。あなたはどのように解答を作りますか。
【小論文問題】小学生からブログ運営をすることにあなたは反対ですか、賛成ですか。あなたの立場を述べ、具体例を用いて○○文字以内でまとめなさい。
小論文のポイントは、次の2つです。
①設問の解答に必ず答える。この例では「賛成か反対か」「具体例を入れる」
②書き始める前に構成を決める。文字数の配分の目安も。

理系論文ではどうでしょう。少し難しい印象ですが、同じように構成が決まっています。
- 導入(仮説、研究テーマなど)
- 調査・研究の目的
- 調査・研究の手法
- 結果
- 問題点・今後の課題
- 結論
このように論文を書く際は結論へ導くための全体構成が決まっています。(※構成は参考例です。)
仕事で会話をするとき、プレゼンをするとき、何かを説明するとき、証明や論文のような構成(流れ)に基づいた話ができれば、聞く側の理解は得られやすくなります。仕事では「正確さ・簡潔さ・説得力」などが求められますのでこのような論文的思考が必要になるのです。
2. 仕事の例でコミュニケーションの練習

次のような一本の苦情が会社へありました。あなた(Aさん)はどのように上司へ報告をしますか。
【苦情電話】4/1月曜日お昼の12時ころ
依頼していた配送業者から電話があった。荷物を受け取りにいくように言われていた場所へ受け取りにいったが、預ける荷物はないと言われた。電話を受けた事務員から担当課のAさんへ連絡があった。Aさんは、依頼を受けた別の課のBさんへ受け取る荷物がなかったことを確認した。すると、Bさんは「Aさんと同じ課のCさんには伝えていた」と言った。今度はCさんへ確認をすると「雑談の中で今日の荷物がないことは話にあがっていたが、担当は私ではなくAさんだから、直接BさんからAさんへ伝えてあると思っていた」と言われた。
この一連の流れをそのまま時系列で報告してしまうと、聞く側の上司は「それで?それで?」となりかねません。
では、先ほど例として挙げた証明と論文を参考に報告の構成を考えてみましょう。
【報告内容】→これから話す内容の把握
・連絡ミスで配送業者から苦情があった件について
【結 果】→上司が一番気になるところ
・配送業者には経緯の説明とお詫びは済んでいる
【問題が起きた経緯と問題点】→上司が次に気になるところ
・連絡をする側と連絡をされた側の認識の違い
【今後の対応】→上司が求めているもの
・担当者へ直接の連絡を徹底する。どうしても連絡が取れない場合は、メール等で記録を残すとともに伝言も併用する。
3. 数学の逆算で仕事ができる人に

最後に、結論を意識する逆算の発想方法を紹介します。
仕事で改善案を提案するときの構成を考えたいと思います。このとき、まずあなたが提案したい改善案を結論として意識します。そして、その結論へ導くための根拠を考えて資料を作ります。
X(現状)ならY(ある問題が発生)YならばZ(改善案が必要)、よってXならばZです。ここまでは誰でもやっていることですね。
ではもし数学の問題で「命題X=Z」を証明するときはどうするでしょう?
元の命題の順序を入れ替えて否定したものを対偶といいます。対偶は、元の命題と真偽が一致するため、元の命題を証明する代わりに証明することがあります。
この命題の対偶は「ZでないならばXでない」です。
Z(改善案)がなければX(現状)ではない、結果X(現状)を変えるためにはZ(改善案)が必要となります。(対偶については次回の数学講座でも)
この対偶を活かすことが逆算の発想になります。改善案Zをやらなかった場合のリスク等を説明する、改善案Zを否定された場合の対処法を考えておく、これらの資料を準備しておくことで説得力を増すことができるのです。
人生は何かのきっかけで変わります。きっとこの記事を読まれたあなたは「話す前に考える」意識が芽生えたはずです。できるかできないかの差ではないんです。やるかやらないかの差なのです。数学的な論文的思考力は、あなたの社会人生活で必ず武器となります。
おすすめの本を幾つか紹介します。武器となる一冊に出会ってください。
いかがでしたか。次回の「大人のやりなおし数学講座」も是非よろしくお願いいたします。

