
仕事でできる人と思われたいんだけど、
問題が起きたときに、焦っちゃうんだよね…

論理的に考えることで冷静を保てるよ!
数学の問題が解けないときと似てるんだ~。

確かに!
数学解けないと「わぁっ~」てなるもんww
前回までの数学講座では、第1回数字の力、第2回図形の力、第3回論文的思考について考えてきました。そして今回は第4回「問題解決力」について考えてみたいと思います。
現在は情報過多の時代であり「どの情報が正しいのか、どの情報を利用するのか」自分で判断し見極める力が必要となりました。
「インターネットの記事にあったので…」というセリフ、使ったことはありませんか?
それは今では言い訳にしかなりません。自分でそれがいかに正しいかの根拠まで探し説明することが求められる時代です。
数学では、多くの成り立つ定理公式等が存在し、問題を解く上でどの定理公式を使うのか、自分で判断し解答を作っていきます。多くの情報から今自分に必要なものは何なのかを判断し問題を解決していく流れは、現在の求められる力と同じです。
それでは、数学の問題を解く過程と実際社会の中で問題に直面した場合を比較していきましょう。
・数学が苦手でコンプレックスだった。
・文系だったので数学的な感覚があるか確認したい。
・社会人として身につけておきたい数学の力について知りたい。
勉強することや教えることが大好き40代初心者ブロガーです。国立大学理学部数学科卒業後、教育職を13年経験。一つひとつの悩みを解決できるような記事になるよう努めます。是非、最後までお読みいただければうれしいです。

目 次
1. 数学的思考回路で現実問題を解決!

①結論から推測する
【仕事の問題】経理部のAさん、給与業務を先月から引継ぎ、今月初めて給与計算が合わないという問題に当たりました。どのように解決すればよいでしょうか?
【数学の問題】△ABCが二等辺三角形であることを証明せよ。
それでは【数学の問題】から考えてみましょう。△ABCが二等辺三角形であることを証明したいので、2つの辺ABとACの長さを求めてみます。それぞれ求めた辺の長さが同じであれば、二等辺三角形と言えますね。
【仕事の問題】ではどうでしょうか?
数学の問題の結論は「△ABC=二等辺三角形」でした。
では給与計算が合わないということを式で表してみましょう。すると結論は「支給額=社会保険料+非課税額+被課税額」が成り立たないことと表すことができます。
次に、二等辺三角形を証明するためには、2つの辺が等しいと言えればよいので、2つの辺の長さを求めることにしました。
給与計算では、 「支給額=社会保険料+非課税額+被課税額」が成り立 てばよいので、計算式が成り立たない部署を探すために、細かい単位で(部署ごとに)それぞれの金額を計算していきます。
給与計算の場合は、もうひと手間いりますね。式が成り立たない部署が見つかったら、今度は個人別に誰の給与で計算式が成り立たないのか調べる必要があります。そして、特定された個人(新たな結論)に対して、「この方は先月退社したので給与支給はないが、社会保険料だけが控除されているのではないか」など新たな推測をしていきます。
②推測が正しかった場合

数学の例では、2つの辺の長さを求めそれが同じ長さであった場合、二等辺三角形の定義に当てはめ「△ABCは二等辺三角形である」と結論付けることができます。
給与計算の例では、特定した個人の「給与及び社会保険料の入力間違い」と分かった場合は入力を訂正することになります。
③推測が正しくなかった場合

1)計算間違いがなかったかを確認
数学の問題でも、給与の計算でも、成り立たないときには必ず2~3回は試すべき基本ですね!簡単なミスは一番よく起こるものです。
2)違う側面から推測の検証を行う
数学の例では辺ABと辺ACの長さを求めましたが、それらが等しくなかった場合を考えてみましょう。その場合は残りの辺BCの長さも求めてみます。もし辺BCが辺ABまたは辺ACのどちらかと同じであれば二等辺三角形と言えますね。
給与計算の例ではデータの入力間違いという推測が間違っていた場合を考えてみます。例えば、非課税の交通費をマイナスで入力していたとしましょう(先月の修正として)。すると、給与支給額は当然減額されますが、非課税額はマイナスではなく0円と表示されますので、結論の式が成り立たないということが生じます。
給与業務の例えは、お仕事に関連がない方には少し分かりにくいものでしたね。しかし、着目していただきたいのは、その結論に至る理由を他に考えてみるということです。
3)推測自体を変更する
それでも問題が解決しない場合がありますよね。このようなときは、どうしますか?
癇癪?パニック?あきらめる?いえいえ、数学の問題は熱くなっても解けません。常に冷静に他の手段を考えるまでです。「あ~でもない。こ~でもない。」次のパターンはどうかひたすら成り立つものが見つかるまで繰り返すだけでいいんです。
このようなときは、思い切って方向転換してみましょう!最初の推測が間違っていたのかもしれません。全く違う方法を考えてみてください。
数学の例でいうと、これまでは「2辺が等しい⇒二等辺三角形」という証明を試みていました。それを「2角が等しい⇒二等辺三角形」にしてみてはいかがでしょうか。これでも二等辺三角形ということが言えますね。
では給与の例ではどうでしょうか?入力間違いでもない。その他の理由も考えられない。それではシステム自体の不具合かもしれません。
2. まだまだある!数学的思考の手段

「1. 数学的思考回路で現実問題を解決!」では、数学の証明の例を挙げました。数学的思考には他にも問題解決に役立つものがたくさんあります。そのため、社会人になっても数学的思考は必要であり数学を勉強する意義があります。特にこれからの情報過多の時代には必要であると確信しています。
・過去に似た問題を解いたことはないですか?
→そのときに解決した手段を使って解いてみましょう。
・与えられた条件を使っていますか?
→見逃している条件がないか確認しましょう。
・問題文を自分が理解しやすい形に変形できますか?
→本質に焦点を当て余計な条件に振り回されないようにしましょう。
・図を書いて考えることはできますか?
→視覚的に表してみましょう。
・試し算はしましたか?
→最後にもう一度確認をする習慣をつけましょう。
3. 爪が甘いと言われないために!

「1-②の推測が正しかった場合」では、給与計算が合わなかった原因は「給与及び社会保険料の入力間違い」とわかりました。そして、ある特定の個人の入力を訂正しました。
それでは、みなさん、これで問題解決でしょうか?
数学では、「成り立たないことを証明することは簡単」なのです。なぜなら、成り立たない反例を1つ見つければよいからです。それでは、成り立つ証明はどうするのでしょう?
ある命題をそのまま証明することが難しい場合、その命題の対偶を証明するという手法があります。
まずは命題の説明をしますね。
【命題】飛行機は(仮定)、空を飛ぶ乗り物である(結論)。
命題の前半部分を(仮定)、後半部分を(結論)と呼びます。この仮定と結論の順序を入れ替えたものを『元の命題の逆』と言います。
【逆】空を飛ぶ乗り物は、飛行機である。
元の命題が正しくても逆が正しいとは限りません。空を飛ぶ乗り物にはヘリコプターや気球などがありますね。
では次に仮定と結論をそれぞれ否定します。それを『元の命題の裏』と言います。
【裏】飛行機でなければ、空を飛ぶ乗り物ではない。
これも逆と同じで、元の命題が正しくても裏が正しいとは限りません。飛行機でなくてもヘリコプターや気球かもしれないからです。
では、最後が『元の命題の対偶』です。仮定と結論の順序を入れ替えて否定します。
【対偶】空を飛ぶ乗り物でなければ、飛行機ではない。
この対偶は元の命題の真偽(正しいか正しくないか)が必ず一致します。そのため、元の命題の証明の代わりに対偶を証明することができるのです。
また、逆と裏の関係は対偶になりますので、逆と裏の真偽も一致します。そのため、元の命題と元の命題の逆がどちらも真(正しい)であるとき、その命題の(仮定)と(結論)は等しい(同じものとみなす)となります。
では、最後に命題の真偽が決まったときの条件の話をします。

「給与計算が合わない原因は、個人の入力間違いである」
この命題について考えましょう。
(給与計算が合わない原因)をX、(個人の入力間違い)Yとすると、今回入力間違いが見つかりましたので「X⇒Y」が成り立ちます。「X⇒Y」が真(正しい)のとき、Y(個人の入力間違い)はX(給与計算が合わない原因)の必要条件と呼ぶことができます。(高校時代、矢先は必要!という覚え方があったかもしれませんね?!)
それでは逆の命題「Y⇒X」はどうでしょうか?真(正しい)ですか?
もし、個人の入力間違いだけが給与計算の原因であれば真となりますね。真であれば、 Y(個人の入力間違い)はX(給与計算が合わない原因)の十分条件と呼ぶことができます。 しかし、まだそれだけが原因とは判明していないときは偽(正しくない)となります。十分条件ではありません。
仕事の問題解決が必要な場面で、一つ条件をクリアし安心している方によく遭遇します。その方は解決のための必要条件を満たしていますが十分条件を満たしていないのです。「その条件は問題解決には必要ですがそれだけでは十分ではありません。」数学ではなく会話としてもしっくりきませんか?
問題解決の際は、逆の命題の真偽を確認する作業を忘れないようにしましょう!
最後に補足ですが、元の命題及び逆の命題のどちらも真となるとき、(仮定)と(結論)は等しい(イコール)ということができます。必要十分条件のときですね。同値と言ったりもします。
人生は何かのきっかけで変わります。きっとこの記事を読まれたあなたは課題解決には数学的思考が役立つということを知っています。数学は苦手だという思い込みを捨て、課題に直面した際は数学的に捉えてみてください。他の方とは違った説得力のある解決法が見つかるはずです。
最後に今回もおすすめの本を幾つか紹介します。武器となる一冊に出会ってください。
いかがでしたか。次回の「大人のやりなおし数学講座」も是非よろしくお願いいたします。

